ブログBlog

不妊治療の「ドツボ」にはまる人の共通点とは

不妊治療の「ドツボ」にはまる人の共通点とは何か。
ここ数年、タイでの不妊治療を支援する中で、ある共通点に気づきました。
それは、いわゆる「優秀な人」ほど、不妊治療に深くはまり込んでしまうという現象です。

高学歴で一流企業にストレートで就職した女性の例

例えば、こんな方がいました…

彼女は努力を惜しまず、受験戦争を勝ち抜き、偏差値の高い大学に進学。
卒業後は一流企業に就職し、両親にも「自慢の娘」と言われてきました。
挫折とは無縁の人生。
いや、厳密には小さなつまずきくらいはあったかもしれませんが、
負けん気と努力で乗り越えてきました。

そして、そんな彼女が選んだパートナーもまた、優秀な男性でした。
一流企業に勤め、海外赴任の辞令を受け、バンコクへ。
彼女は自身のキャリアを一旦諦め、夫の駐在に帯同する道を選びました。

最初は、初めての異国の地での生活を楽しもうと思っていました。
しかし、ふと気づくと、周りの駐在妻たちはみんな子どもがいる。
公園には子どもを遊ばせるママたちが集まり、
駐在員の奥様会の話題は、子どもの学校や習い事のことばかり。

「そろそろ私たちも子どもを作ろうか?」

そう決意し、夫婦生活では避妊をやめました。
当初、そのご夫婦はきっと、2〜3カ月もすれば自然に妊娠するはず、と思っていました。
だって、これまでの人生、計画的に進めてきたことはすべて成功してきたのだから。
しかし、3カ月経っても妊娠しない。 半年経っても、変化なし。
焦り始めました。

まずはタイミング法から…
排卵チェッカー使い、排卵日に合わせて夫とスケジュールを調整。
「妊娠しやすい体質になるには食生活が大事」と言われれば、
栄養バランスを考えた食事を徹底。
「ストレスがよくない」との情報を得て、
ヨガや瞑想も取り入れたり。

けれど、妊娠しない。
気がつけば、朝起きてから寝るまで頭の中は「妊娠」のことばかり。
検索履歴は「妊活」「妊娠しやすい方法」「不妊の原因」…。
「私の何がいけないの?」 「どこで間違えた?」 「もっと頑張らないと…」

次第に夫との関係もギクシャクし始め、仲が良かったはずなのに、
彼の何気ない一言にイライラし、喧嘩が増える一方。
夫が仕事で疲れている日に「今回のタイミングは無理しなくてもイイんじゃない?」と言われると、「私ばっかり頑張ってるのに」と涙が出た。

受け入れられない…

これまで、努力すれば結果がついてくる人生でした。
だからこそ、妊娠できない自分を受け入れられない現象に陥っていました。

優秀な人ほど、思考は論理的で合理的です。
だからこそ、「妊娠」という理屈では説明しきれない現象に直面したとき、どうしていいかわからなくなってしまうんです。

この状態を私は「妊活のドツボ」と呼んでいます。

抜け出せなくなった人は、妊娠することに執着し、
まるで「妊娠すること」が人生のすべてであるかのような
思考に陥ってしまいます。

そして、ますますストレスを溜め込み、
体にも影響を及ぼし、さらに妊娠しにくくなる。
では、どうすればこのループから抜け出せるのか。
そういう方に共通していえる事、それは「大切な視点を忘れている」ということです。

「妊娠は、努力の結果ではない」ということ

例えば、同じ大学を出た同級生が、何の苦労もなく子どもを授かっていることもある。
それは、彼女が優秀でないからではなく、
ただ単に、タイミングが合っただけなんです。

受験や就職と違い、妊娠には「正解」も「成功パターン」もありません。

努力が無駄だと言いたいのではないんです。
ただ、「努力=成功」という方程式が成り立たない世界もある、
ということを知っておくことも必要、ということです。

そして、不妊治療は長期戦になりやすい。
何年もかけて続けることも珍しくない。
その間ずっと、「できない自分はダメだ」と思い続けるのは、
精神的にも肉体的にも消耗してしまいます。

だからこそ、視点を変えてほしいと私は切に思うのです。

「妊娠すること」ではなく、「どう生きるか」を考えてみてほしい。
妊活に振り回されて、自分らしい人生を見失っていないか。
自分の価値は「母になること」だけではないはずなんです。

もちろん、「妊娠したい」という気持ちを否定する必要はありません。
ただ、その気持ちに自分自身が飲み込まれないようにすることが大切だと思っています。

不妊治療は、出口の見えないトンネルのようなもの。
そのトンネルの中で、いかに自分を保ち、納得のいく選択をしていくか。
妊活に悩むすべての人に、少しでも心が軽くなる視点を持ってもらえたらと思います。